女系天皇論と少子化

天皇という制度そのものが男系の継承を直接の目的としたものなので、「女系のそれ」を改めて「天皇」と呼ぶには新たな伝統を開始する必要がある。なんとなく老人男子中心の保守層が「伝統を!」と、女性を中心のリベラル層が「男女平等!」とかの感覚で討論され停滞している議論へ参加してみることしたい。

天皇制の発祥や目的が何であれ「不変のY遺伝子」の確実なトレースおよび遺伝子の残存本能に根付いて実行されてきたことに疑いを持つことは難しい。そういう状況に現代になって変化が加わる。

 一つは「男女平等の下の一夫一婦制」
天皇Y遺伝子を維持する天皇制は一夫一婦制の下では存続が難しい。血統を確実に保存する「側室制度」を先にやめてしまっているのだから、彼の御一族は存続を破棄してるに等しい。

側室制度は厳密には廃止したわけではなく、「たかが四代百年前の」大正天皇の御代に停止してしまってそのまま制度化というのが実情なので、再開するという選択肢もある。
大正天皇の男子は5人いて、当時は「一安心」されたけど孫男子は2人、曾孫男子は1人になってしまったので、その「一安心」時期は過ぎ去り「側室をとらない」と言うご判断こそが「天皇制の危機」につながったとの認識をもち、側室を持つことにすればどうであろうか。
しかしながらこれはこれで難しい議論がある。「人民」の代表や象徴であられる存在が側室を持つとなれば、「一般にもある程度は」となるであろうからだ。神として特別視することも難しく、「模範たるべし」とするならいわずもがなだ。

もう一つは「DNA鑑定」である。身も蓋もないんだけど、これを考察して気がつくのは「DNA鑑定」に正確性を保証させることで、天皇制を終わらせたり、夫婦の解釈や定義を見直すことができるということだ。

ここではあえて、皇統の目的についてその開始時期の意志のようなものを慮ることで考察をすすめてきて、それを伝統をさかのぼったような解釈としているけど、「Y遺伝子なんてどうでもいいし、DNA鑑定があるじゃないか」というなら、その社会的な存在意義についてきちんと考察をする必要がある。そしてもちろん社会的な意義はあるし、廃止する理由は見当たらないから、この時代にきての天皇制の変更をすすめる「女系天皇」は「あり」となる。

地球が狭くなって少子化はもはや時代のニーズではあった。しかしこれから天皇制の存続、変化なども含んで議論するに当たり、この時代に国というよりこの文明を衰退させずに、次代に継承していきたいという強い意志を持っていない「普通の大人」は少子化以前に「少大人化」への圧力が増えることを避けることはできないだろう。
「大人を減らして子供を増やす」なんて話が始まることに感じるのは希望だろうか、それとも恐怖だろうか?

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